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関西電力が国に提出していた大飯原発3、4号機の安全評価(ストレステスト)に対して、経済産業省原子力安全・保安院が妥当とする判断を示した。
政府はストレステストを定期検査で停止中の原発を再稼働させるための条件と位置付けている。保安院の判断は再稼働に向けてのゴーサインと受け取れる。
東京電力福島第1原発の事故解明は緒に就いたばかりだ。福島県は廃炉を宣言し、原発を抱える全国の自治体で安全性に対する疑問が高まっている。再稼働できる環境とは程遠い。
野田佳彦政権は、事故原因の究明と監視体制の立て直しに全力を尽くすべきだ。
ストレステストは、地震、津波、全電源喪失、海水に熱を放出する機能の停止といった事態が生じた場合、燃料損傷などに至るまでにどの程度余裕があるかをコンピューターで解析する。菅直人前政権が導入した評価方法だ。
定期検査中の原発を対象とする1次評価と全原発に対する2次評価があり、7社から14基分の1次評価が提出されている。
今回、保安院が妥当としたのは福井県の大飯原発3、4号機の1次評価だ。ストレステスト導入以来、初の判断である。
野田首相は昨年9月の所信表明演説で、地元自治体との信頼関係を大前提として「定期検査後の再稼働を進める」と述べている。こうした発言を踏まえれば、政府は大飯原発を皮切りに再稼働へと踏み出したと言えるだろう。
現在稼働中の原発は5基にとどまる。4月中にはゼロになる可能性もある。このままでは電力供給に問題が生じるとの指摘は理解できる。だが、だからといって再稼働には賛成できない。
ストレステストの妥当性を判断する資格が保安院にあるのか、疑問が残るからだ。
福島の原発事故で、保安院や原子力安全委員会のチェック機能が働いていなかったことが明らかになった。電力会社とのなれ合い体質が指摘され、チェック機関としての存在意義が問われている。その最中に「妥当」と言っても信頼は得られないだろう。
大飯原発のストレステストをめぐる専門家会議に対し、市民から公開を求める声が高まったのは当然だ。地に落ちた信頼を取り戻すためには、会議の全面公開を含め原発行政全般にわたる思い切った改革が欠かせない。
安全性の論議は、それがあって初めて可能となる。